江津良の浜の石の上に座って話す 男は まぎれもなく 寸借詐欺の男だった
暮れかかる19時半
浜の住民の老女老爺と話していた
家の 火ばさみを手に 自転車で 浜に直行
男がナイフを持っていたら ステンレスの火ばさみで たたき落とそうと思ったわけだ
背後から
おっさんっ と 大きな声で呼びかけて 前に回った
男の横に腰掛けているの老女と老爺は 怒鳴り聲に おびえた表情をしていたけれど かまわず
座って足をぶらんとさせた 男の足を ステンレスで バシバシ バシ バシ 叩きながら
あたりに聞こえそうな 怒鳴り声で
かねかえせっ
と 迫った
男は 表情をこわばらせて
とってきます とってきます
と 石から下りて 去ろうとした
どこへ行くっ かねかえせっ
男は 取って来る所作をしながら 浜邊の民宿の法へ行った
びっくりした顔の老女に
あのおっさんと 知り合いか?
ときくと 老女は
いや うちの民宿に泊まってる客や
おばちゃん あの男サギ師やで
というと
もう十日も泊まってまだはろてもろてない
毎朝コーヒーのんで そのお金ももろてない
おばちゃんだまされたら あかんで
と 言っていると おとこが 戻ってきた
手に1000円札を何枚か持っている
それを 取り上げながら
よくも嘘八百の電話番号を書いたなっ
住所もそんな番地ないぞっ
というと
今日の昼 お宅へ行ったんです
と 男
あほ 家に おったわ
電話番号 書き間違えたかな
と 男
すみませんでした
これでなかったことにしてください
と 男
金を取り返したので 家にもどり 一時間ほどして
老女に電話をかけたら
ひと月ほど 泊めてというてきて 今日で十日
娘さんと子どもと三人なので 普通は4000ずつもらうとこ 一日7000円でええて
いうたげた
5万円 貸した
子どもに毎日 100円くらいのお菓子あげて 喜んでもろてる
民宿の女将も すっかり 男を信用していた
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